当院の患者様で保険のお仕事をされている方がおられます。ある日、その方からのご紹介でKさんというとてもいい笑顔の男性が来院されました。入れ歯が痛くて咬めないのでインプラントにしてほしいというご希望でした。この方は若いころから会社の経営をされてとても忙しい日々を送っておられ、歯周病や虫歯で歯が悪くてもなかなか歯科治療にゆくことができず、気がつくと数本の歯がダメになり、その後も抜歯をしては入れ歯を増やしてゆくということを繰り返してきたそうです。最終的には上顎は数本の歯以外は全て入れ歯、下顎もとうとう大臼歯を失ってしまい不安定な上顎の入れ歯では痛くて咬めないという状態になっていました。
私は、早速入れ歯の修理と調整を行い、痛みが出ないように整えてゆきました。痛みが解決してからカウンセリングを行い改めて、Kさんのご希望をお聞きしご相談の上、治療の方針を決定しました。
治療計画は、まずご本人も満足するような完璧な総入れ歯を作ります。それをもとにコンピューターシュミレーションして、サージカルガイドを作ります。そしてメスで切らないフラップレスオペにてインプラントを埋入し、ブリッジを作るというものです。
ただこの方は上顎臼歯部に骨が少なく、インプラント埋入と同時に、仮の歯を固定することはできませんでした。
サイナスリフトを行い、数カ月の治癒期間を置いてから、平成23年の年末には1回目の仮歯を完成させました。
平成24年の1月に来院された時に、Kさんが初めてこのようにおっしゃいました。
「私は、先生に感謝をせんといかん。先生にお礼を言わんといかん。」
そして、この後数分間に渡ってとても感動的な話をされました。
お正月にお刺身を食べたそうです。その時にあまりもの美味しさに、涙が止まらなかったそうです。こんなに自分の歯で噛めることが美味しい事なのかと思うと、ポロポロ、ポロポロ涙が出て、いつまでも止まらなかったそうです。それ以来、御夫婦で市内中心部にある、高級なお寿司屋さんに毎日のように通っているそうです。そして、御主人が「トロ」と言って注文し、美味しそうに食べている姿を見て、奥様も大変うれしく感じているという事でした。そして奥様も「主人が本当に喜んで、涙がポロポロ、ポロポロ出て止まらなかったんですよ。」と、本当に嬉しそうにおっしゃるのです。私もその話を聞いて、御主人と奥様の心の底からの喜びが伝わってきて胸が熱くなりました。そして自分は、こんな患者さまの笑顔の為に歯科の仕事をやっているんだなということを再認識しました。
この日は一日中、大変幸せな気分で仕事をすることができました。
カナザキ歯科 院長ブログ「歯科道一直線」
患者様の声
2012/02/15