いつものように今年1年がまた一瞬で終わってしまおうとしているわけですが、今年一番感動し、心に刻まれた言葉はいったい何だったかと自分に問いかけてみようと思い頬杖をつき空に目を向けました。しかし、考えるまでもなく、超存在感のある言葉が自分の目の前に躍動しています。「うちは家族じゃけん」これは、ある大きな会社の会長さんが私におっしゃった言葉です。
当院の理念の中に「for the staff」という言葉があります。Staffが働きやすく、働き甲斐がある環境を作り、幸せになってもらいたいという思いを込めた言葉です。私はこれまでもスタッフ教育やスタッフの福利厚生に力を入れてきましたが、なかなか人手不足の問題があったり、急速な価値観の変化に困惑したり、人事問題はそれなりに苦労するところがありました。
当院の歯科技工士で以前この会長さんの会社の社員だった人がいます。運転手から歯科技工士に進路変更したその技工士さんはいまだに会長さんを敬愛し、忠誠心を持っているように私は感じていました。そのことを会長にお話ししたときに会長がおっしゃった言葉がこれです。「うちは家族じゃけん」ごく自然に出てきた飾りのない短い言葉は、何とも言えない暖かさと、大きく人を包み込むような安心感に満ちた心地良いものでした。会社の創業者が社員を家族だと思って大切にしている。自然に出てきたこの言葉は社員に対する本当の愛情のあらわれだといえるでしょう。心を打たれました。すごいことを言う人だなと思いました。頭で考えてしゃべる言葉には決して宿らないエネルギ―がこの言葉にはみなぎっており、今でも私の体の中で躍動し生きているように感じます。
学生時代の話ですが国文学の教授が講義の中で、「日本の神話のなかで最も強い神はことのはの神だからあなたたちも言葉を大切に使いなさい」と教えてくださったことが今でもとても印象に残っています。私は本当の心がこもった言葉には命が宿ると思っています。会長のこの言葉はまさに命宿る言霊ではないだろうかと私は思います。自分もこんな言葉が自然に出てくるようになったら、もっと周囲の人から信頼される人間になれるのではないかと思います。その前にそんな素敵な言霊がにじみ出る内面性を持たなければ話になりませんが・・・(笑)。また一つ大きな目標をいただけたように思います。