カナザキ歯科 院長ブログ「歯科道一直線」

2021/02/26

死や病気や失敗が悪いんじゃない

「死や病気や失敗が悪いんじゃない。今までの社会はそれらをマイナスととらえ、蓋をし、なるべく見ないようにしてきた。触れないようにしてきた。しかし、それは違う。それらから学ぶものが沢山あるんです。目をそらすべきではない。」こう力強く、温かく語る一人の

言語聴覚士がいる。愛知学院大学で准教授として教鞭をとる牧野日和先生だ。

先日、当院が主催する「食と健康ネットワーク松山」で牧野先生によるウェビナーを開催したが、全国から多くの人が参加してくれた。私は牧野先生との接点がなかったが介護施設江南荘の管理栄養士である森木洋子さんが「私が今までで最も影響を受けた人」と紹介してくれた方だ。

はじめはどんな方だろうとzoom(遠隔テレビ電話)でお話ししたところ、素晴らしいお人柄であることがすぐに分かり、その場で講師をお願いした。先生は福井県の専門学校卒から独学で博士号を取得し大学の准教授まで上り詰めた叩き上げの人だ。駆け出しのころ、非常に重度な障害児のお母さんから「あんた、この子が死んでくれたらいいのにと思っとるじゃろ?」と言われ、まったく一言も返す言葉がなかったらしい。そのショックからオーストラリアに留学し、死に物狂いで摂食嚥下について学んだそうだ。「光だけを見ていては本当に幸せになることはできない。光によってできた影を理解することで本当の幸せの意味が分かる」というアブラハム・ハロルド・マズローの言葉を引用しながら「お食い締め」を分かりやすく熱く解説してくれた。「お食い締め」とは年を取り人生の最後を迎えた時の最後の一口の食事のことで、赤ちゃんの「お食い初め」の逆であり、牧野先生が考えた造語である。

セミナーが盛会に終わり早1か月が過ぎるが、いまだに牧野先生の人を包み込むような言霊の暖かさが胸の中に残っている。多くの人からこの続編を望むメールが届いた。今年もまた牧野先生にウェビナーをお願いしてみようと思っている。