先日来院された患者さんの話です。
「治療しても痛みが止まらないので診てほしい。それから前歯の審美治療ならカナザキ歯科がいいと聞いてきました」という事で、上顎前歯の根の治療中で転院されてこられました。
転んで前歯を打って、軽い骨折もあり、歯がグラグラして神経が死んでしまったようです。
根の治療をしても痛みが止まらないので転院してこられたようです。
私は、「根の治療が上手でない先生だったのかな?」単純にそう思いました。
院長の対応を横で見ていたのですが、驚いたことに根の治療には全く手を付けずに歯の固定を始めたのです。そして数分後、数歯に渡る固定が終わり、「はい、痛みどうですか?」と院長が聞くと「あれ!?痛くなくなりました。治りました!不思議です!」患者さんも驚いています。
あまりに鮮やかな治療で、何が起こったのかわからず院長に聞いてみると。
「この患者さんは、確かに外傷によって歯髄(歯の神経)は失活しているが痛みの原因は根管治療の不良によるものではなく歯根膜の炎症によるものだ」
「どうして根っこではなく、歯根膜の炎症だとわかるんですか?」
「この患者さんは歯並びがすごく悪く、下唇が荒れているでしょ?それは嚥下時の舌の前方突出癖と口唇癖によって成長期に歯並びが悪くなっている。だから今も飲み込みをするたびに舌と唇が歯を押している。しかも歯がグラグラになっているから毎回揺さぶられて歯根膜に炎症が出ていると考えられるんだ。だから、固定してあげれば歯根膜に対する刺激がなくなるから炎症が消えるというわけだよ。そういうことを瞬時に読み取れるようにならないとね」という院長からのいつものさりげない答えが返ってきました。
いつも院長先生は診断が的確で本当に魔法のようで感動しました。
私も院長先生のような歯科医を目指してがんばりたいと思います。
カナザキ歯科勤務医 W