摂食嚥下リハビリを進めるにあたり、基礎訓練と摂食訓練と同時に、患者の栄養状態をチェックすることが重要になる。栄養状態のチェックポイントとしては、①全身状態(肥満、るい痩、浮腫)②皮膚・粘膜(乾燥などの有無)③BMI(body mass index;体重㎏÷身長m÷身長m)④体重減少率(健常児体重㎏-現在の体重㎏)×100÷健常児体重㎏⑤通常体重比(現在の体重㎏×100÷通常体重㎏)がある。また、簡易栄養状態評価表を使用することもある。
高齢者は脱水にもなりやすく気を付けなければならない。脱水を起こすと、栄養素や酸素の運搬、不要なものの排泄、体温調節、身体の様々な機能の維持ができなくなってしまう。身体の恒常性の維持のためには、一日当たり500ml程度の尿量が必要になり、一日当たり1000ml程度の水分補給がなければ脱水に傾いてしまう。また、脱水では循環血液量が低下するため、安静時頻脈で起立性低血圧を起こしやすくなってしまう。
摂食嚥下リハビリの中での食形態として、国内の病院、施設、福祉関係者が共通して使用できることを目的として食事(嚥下調整食)及びとろみについて学会分類が設けられている。これにより嚥下障害の程度を把握しやすくなっており、リハビリを行う上での指標として使えるようになっている。
摂食嚥下障害に対するチームアプローチとしては、医療職だけでなく、介護職、家族を含めチームとなり、患者、家族の希望を踏まえてチームがゴールに向けて一貫したサービスを提供するために、他専門の仕事内容を理解しておく必要がある。また、在宅患者の場合は特に、患者の摂食嚥下機能をどの程度維持・向上させるかは本人の置かれている環境に左右されやすいため、その環境を把握する必要がある。さらに家族は日常の介護で披露していたり、仕事が忙しく専門職から指導されたとおりの介助ができなかったりする。そのような事情を見極めたうえで、本人や家族は日常生活の中に何を求めていて、何ができるのか、何がしたくてもできないのかなど、患者の価値観を知っておく必要がある。
研修医:餅原 芳文