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日々の研修だより

2020/02/25

知覚過敏について

知覚過敏とは、歯ブラシの毛先が触れたり、冷たいもの、甘いものを食べたとき、風に当たった時などに感じる一過性の歯の痛みのことで、特に齲蝕や歯髄の炎症などの病変が無い場合に見られる症状をいう。

 知覚過敏の原因としてはまず歯肉退縮が挙げられる。歯肉の位置は、加齢とともに少しずつ下がってくる。それに伴い歯根が露出し、象牙質が外気に触れる状態となる。このような象牙質表面では、歯ブラシが触れたり、温度変化などの刺激で痛みを感じることがある。また、同じように象牙質が露出する歯の破折や、噛みしめ食いしばりによる咬耗、摩耗、さらに酸蝕症によっても引き起こされる。他には齲蝕治療やホワイトニングにより歯髄の疼痛閾値が低くなり、知覚過敏を引き起こすこともある。

 知覚過敏の治療法としてはまず、再石灰化の促進がある。知覚過敏症は軽度なものだと期間が経過することで、自然と消失することもよくある。これは、象牙質の露出部分において、唾液や歯磨剤からの再石灰化成分によって、象牙質の微細な空隙が封鎖されてくるためと考えられる。次に、歯髄の興奮を抑えるために硝酸カリウムが含まれる薬剤を塗布し、神経の伝達を遮断する方法である。実際には歯磨剤に硝酸カリウムを含ませてそれを継続して使うと、知覚過敏の改善効果が確かめられている。他には、象牙質の露出部分を物理的に被覆する方法がある。これはレジン・歯科用セメントなどのコーティング剤を使用する方法と歯周外科によって歯肉で被覆する方法がある。また歯ぎしり、食いしばりが原因となっている場合には、ナイトガードの使用を勧めることもある。歯ぎしり、食いしばりの原因は個人差があり、その原因自体を取り除くのは困難である。それで、ナイトガードを使用してもらい、エナメル質や歯周組織のさらなる破壊を防ぐ治療が行われる。他にはレーザーにより、象牙細管の封鎖をして刺激が伝わりにくくする方法もある。通常は以上のような治療法が行われるが、それでも知覚過敏が治癒しないときは最終手段として抜髄が行われることもある。しかしこれはあくまでも最終手段であり、患者が訴える痛みが本当に知覚過敏であるのかどうかも含めてしっかりと検証したうえで行わなければならない。

「参考文献」 第6版 保存修復学 千田 彰 著他 医歯薬出版株式会社

研修医:餅原 芳文