行動変容療法とは、行動理論を用いて望ましい行動ができるように変えていき、それを治療のために用いることである。歯科医療においては、ブラッシングの上達や歯科的な生活習慣の改善のために、障害の人のみならず、障害のない成人を含め多くの人に用いられている。
行動変容療法は、条件反射的なレスポデント行動をコントロールする「不安軽減法:レスポデント条件付けに基づく療法」と自発的な行動(オペラント行動)をコントロールする「行動形成法:オペラント条件付けに基づく療法」に大きく分けられる。
不安軽減法の具体例としては、筋肉の力を抜きリラックスさせることで不安を抑制するリラクセーション法、恐怖刺激を弱いものから強いものへと段階的に用いて恐怖反応をなくしていく系統的脱感作、Tell(話して)Show(みせて) Do(行う)というテクニックを用いるTSD法、「10数える間だけやってみよう」といい数を数えながら歯科機器に慣らしていくカウント法、観察学習、模倣学習ともいわれ、モデルの行動を観察することによって観察者の行動に変化が生じることを期待するモデリング法などが挙げられる。
行動形成法の具体例をしては、望ましい行動(オペラント行動)を示した患者に対し、正の強化子であるトークン(代用貨幣;一定の条件によりシール、スタンプ、ポイントなどがもらえる)を与え、トークンが一定量たまれば、特定の品物と交換するといったシステムを使うトークンエコノミー法、ある一定期間患者が正の強化子を受けられないようにすることで不適切な行動を減少させるタイムアウト法、声の強弱、高低、口調などの適宜調節して話しかけることにより患者に働きかけるボイスコントロール法、複雑な行動をスモールステップに分け、実行可能な行動から学習させ、最終的に目標行動を達成させるシェイピング(形成化)法などが挙げられる。
行動変容療法は、一定の発達レベルに達していることが成功させる条件となっており、歯科治療への適応行動がとれるようになるためには3~4歳以上の発達レベルが必要になる。
「参考文献」障害者歯科 日本障害者歯科学会編集 医歯薬出版
研修医:餅原 芳文