歯周病は歯周疾患ともよばれ,歯肉病変と歯周炎とに大別される。歯周病は非プラーク性歯肉疾患を除き、歯周病原細菌によって引き起こされる感染性炎症性疾患であり,歯肉,セメント質,歯根膜 および歯槽骨よりなる歯周組織に起こる疾患をいう。さらに,歯周病には上記疾患のほかに壊死性歯周疾患,歯周組織の膿瘍,歯周-歯内病変,歯肉退縮および強い咬合力や異常な力によって引き起こされる咬合性外傷が含まれる。ただし歯髄疾患の結果として起こる根尖性歯周炎および歯周組織を破壊する新生物(悪性腫瘍など)は含まない。
歯肉病変の種類としては、①プラーク性歯肉炎(プラーク単独性歯肉炎、全身因子関連歯肉炎、栄養障害関連歯肉炎)、②非プラーク性歯肉炎(プラーク細菌以外の感染;特殊な細菌感染、ウイルス、真菌による歯肉病変、粘膜皮膚病変;扁平苔癬、類天疱瘡、エリテマトーデス、アレルギー性歯肉病変、外傷性歯肉病変)、③歯肉増殖(薬物性歯肉増殖症;フェニトイン・シクロスポリンA・ニフェジピン、遺伝性歯肉繊維腫症)、④HIV感染に関連してみられる歯肉病変が挙げられる。
歯周炎の種類としては①慢性歯周炎(全身疾患関連歯周炎;白血病、糖尿病、骨粗しょう症、後天性好中球減少症、喫煙関連歯周炎、その他のリスクファクターが関連する歯周炎)、②侵襲性歯周炎(全身的に健康ではあるが,急速な歯周組織破壊,家族内集積を認めることを特徴とする歯周炎)、③遺伝疾患に伴う歯周炎(家族性周期性好中球減少症,Down症候群,Papillon-Lefèvre症候群,Chédiak-Higashi症候群など)が挙げられる。
最近,歯周病は生活習慣病として位置づけられ,食習慣,歯磨き習慣,喫煙,さらに糖尿病な どの全身性疾患との関連性(歯周病が全身の健康にも影響を与える:ペリオドンタルメディシン)が示唆されており,歯科医療従事者による保健指導の重要性が示されるようになっている。患者個人の生活習慣の改善,自助努力,さらには医療連携(全身性疾患など)などが必要である。
「参考文献」 歯周病の診断と治療に関する基本的な考え方
日本歯科医学会
研修医:餅原 芳文