パーキンソン病とは、錐体外路系の運動障害を示す疾患で、中脳黒質の変性と線条体でのドパミン量の減少が特徴的である。有病率は人口10万人当たり100人前後で、患者数は全国で十数万人にのぼる。発症年齢は50~60歳代が最も多い。
パーキンソン病の主な症状は、振戦、筋固縮、無動・寡動および姿勢反射障害(4大徴候)が見られる。初発症状は振戦(60~70%)が最も多く、これに歩行障害、筋固縮、動作緩慢などが続く。振戦とは「ふるえ」のことで、上肢に多く見られ、頭頚部やおとがい、口唇にも出現する。筋固縮は肘関節や手関節を他動的に動かすと筋肉の抵抗を感じることで、持続的な抵抗を鉛管様固縮、断続的な抵抗を歯車様固縮という。無動・寡動は動作が遅く、動作時の運動量が少なくなる症状で、力が入らないわけではないので運動麻痺ではない。姿勢反射障害は、立位に際し前傾・前屈姿勢となり、頭部をやや前方に出し、膝をやや屈曲した典型的な姿勢を示す。動的な姿勢調整も障害され、前・後・側方から押されるとその方向に突進し倒れてしまう突進現象や、徐々に加速し、小走りとなる加速歩行、さらには歩き始めの第一歩が出なかったり、床に足がへばりついて進めないなどのすくみ現象(すくみ足)もみられる。
口腔の特徴としては、下顎や舌の不随意運動であるオーラルジスキネジアがみられる。このような症例では、義歯の不調を訴える場合が多くなる。また、義歯製作の時にも咬合採得が難しい場合があり、その時には主治医に連絡し、薬剤の減量を含めた対応法について相談する必要がある。歯科医療においてパーキンソン病そのものはリスクを伴わないが、四肢の不随意運動やすくみ現象により診療室内の移動に時間を要するので、患者を誘導する時に配慮して行うべきである。さらに特別に注意しなければならないのは、脳深部刺激装置装着者には、歯科で使用する電気メスは使用が禁忌となっていることである。
「参考文献」 スペシャルニーズデンティストリー 障害者歯科
医歯薬出版株式会社
研修医:餅原 芳文