咬合性外傷とは、許容量を超える咬合力(外傷性咬合)が加わった場合に生じる歯周組織の破壊をいい、歯周組織が十分に残存し、正常な骨レベルとアタッチメントレベルを有した状態で、きわめて強い力が加わって生じた歯周組織の破壊である一次性咬合性外傷と、歯周病などにより歯周組織が減少し、骨吸収とアタッチメントロスが生じた状態で、力が加わって起こった歯周組織の破壊である二次性咬合性外傷に分けられる。
咬合性外傷の口腔内に生じる臨床症状としては、①歯の動揺度の増加、②エックス線写真における歯根膜腔の拡大、垂直性骨欠損、根分岐部の骨欠損、③咬耗、④咬合面の歯冠補綴物の頻繁な脱離、⑤歯の破折、⑥強くクレンチングをおこなっている患者では舌や頬粘膜に歯の圧痕、⑦下顎の犬歯、小臼歯部の舌側、上顎の口蓋正中部の骨隆起、⑧アブフラクション、⑨フェストーンやクレフトの所見、⑩自発痛・打診痛の出現(齲蝕、歯髄炎、根尖性歯周炎、歯根膜炎などがあると、あたかもその歯の痛みを確かめるようにしてさらにブラキシズムを無意識に繰り返し、急性歯根膜炎由来の自発痛や打診痛が出る)、⑪象牙質知覚過敏の出現(強い咬合力により根尖部における循環障害が生じ、歯髄の閾値が低下することが原因と考えられる)、以上のようなものが挙げられるが、これらの変化は咬合性外傷以外の原因でも生じることがあるので、診断にあたっては注意が必要である。
咬合性外傷に対する対応としては、咬合調整、ナイトガードの使用、認知行動療法(リマインダー)などが挙げられる。咬合性外傷は個人差も強く、患者の生活環境や癖、ストレスとも関係が深いため、「治療する」というイメージよりも、予防していくという視点を持つことが重要となる。
「参考文献」 臨床歯周病学 医歯薬出版株式会社
研修医:餅原 芳文